ニュージーランドワイン業界におけるキウイの創意工夫性

力のある大国と競い続ける小国ニュージーランドにとって、キウイ(ニュージーランド人)の持つ創意工夫性とイノベーションという典型的な組み合わせは成功の鍵となっている-特にワイン業界にとっては。

次の世代、若者がキッチンの引き出しをごそごそと探り、ワインオープナーを見つけ「これは何?」と言う日がくるまでにどれぐらいかかるのだろう。

 このシナリオが最初に演じられるのはニュージーランドとオーストラリアである可能性が高い。二国のワイン業界はスクリューキャップへの移行を主導しており、このプロセスにおける世界的革新の口火を切ったのだから。

 スクリューキャップの普及率は世界で30%を超えたばかりのところだが、ニュージーランドでは現在90%以上のワインにスクリューキャップが採用されている。

 「ニュージーランドほど徹底的にスクリューキャップの発展に取り組んでいる国は無い」と数々の受賞歴を有するオーストラリア人ワインライターであるタイソン・ステルツァー氏は話す。オーストラリアと共に、この二つの国は現代におけるワインの品質向上と安定性において、最も重要な発展を成したと言える世界的リーダーである。

 他の多くの分野同様、既存のグローバル市場での競合において、新参者であるキウイの成功の鍵となっているのはイノベーションである。

 来年(2021年)は、スクリューキャップが伝統的コルクより優れていると立証した科学研究に基づいて設立された、ニュージーランド・スクリューキャップ・ワイン・シール・イニシアチブの20周年記念の年となる。

 このイニシアチブは、自分達の販売ワインのうち5~10%がコルク汚染であるとみなされ、コルクに幻滅した4人のキウイ・ワインメーカーによって立ち上げられた。

ほとんどの革命がそうであったように、反対意見が無かったわけではない。ニュージーランドを代表するワインライターでもあるボブ・キャンベルMWは、保守的な伝統主義者と個人的衝突があったという。

 「私のスクリューキャップへの支持がワイン業界の妨げになると考えたあるワインメーカーに、文句を言われ胸を小突かれたような不愉快な経験を思い出す」といい、瓶とコルクにワインが初めて詰められて以来、このワイン栓の革命が他の何よりもワインの品質に大きく貢献することを確約しているとマスター・オブ・ワインは話す。

 そして問題無いコルク栓のワインのように、スクリューキャップのワインは時と共にうまく熟成し、10年後の結果は懐疑派を驚かせた。スクリューキャップのボトルに入ったワインはコルク栓のワイン同様、もしくはより良い状態で熟成していたのだ。世界中での10年にわたるブラインド・テイスティングにおいて、コルク栓のワインがスクリューキャップのワインより優れていたという事例は一つもなかった。そのため、スクリューキャップが安物で質の悪いワインであるという神話はさらに打ち破られた。

 スクリューキャップに対する議論は常に、コルクだけがワインを「呼吸」させるため熟成する、すなわちコルクはボトル内に酸素を取り入れることが可能、という点にある。しかしながら、時間と科学はその論理的根拠を見事打ち消し、実際に今ではいくつかのスクリューキャップはコルクを模倣しワインに少量の酸素を取り込むことができる。

 では(反対派は)何が気に入らないのか?スクリューキャップははるかに簡単で手早く使用でき、瓶内にコルクのかけらが入ることもなく、コルクが中に落ちてしまうこともなければコルク汚染で飲めないということもない。また、ウェイターがコルク汚染のボトルをセラーへ交換しに戻る必要も無く、無駄になったワインの金額が借方欄に記載されることもない。

 唯一妨げとなるのが、コルクを抜栓するセレモニーにまつわるロマンスだ。ウェイターがワインを見せ、抜栓し、コルクがボトルから抜ける時に「ポン」という音を出す最後の身振りを含めて。

 おそらく次なるキウイの創意工夫は、コルクの「ポン」と同じ趣深さを持つような「カチン」と回すスクリューキャップの開け方を探すことになるだろう。しかしながら、データ上(コルクからスクリューキャップへの)転換を喜んで受け入れている消費者はどんどん増えている。

 

そして当然ながら、ワイン業界で成功しているキウイの他のイノベーションも、以下の通り存在する。

 

ザ・ライター・ワイン・イニシアチブ - The Lighter Wines Initiative

2021年はまた、ニュージーランドを低アルコールワインにおいて世界一にすることを目標とした、7年間にわたる1,700億ドルの研究開発の集大成の年でもある。このプログラムの究極の目的は、風味に影響を与えることなく、ニュージーランドワインとして30%低い自然な低アルコール度の高品質ワインを生産すること。これまでの結果は素晴らしいもので、イニシアチブに参加しているワイナリーが生産した低アルコールワインが12ヶ月間で47のメダルを受賞している。

 

ザ・ワイン・グレネード - The Wine Grenade

オークランド大学の学生が、より早く低コストで市場にワインが届くよう、熟成のプロセスを速めることを目的に考案した携帯型デバイス。通常オーク樽の中で起こる酸素との接触を模倣し、デバイスをステンレスタンクで熟成中のワインの中に沈めることで、動く浸透膜を通して少量の酸素をゆっくりと放出する。ワインメーカーはモバイルアプリにて遠隔で進捗を確認したり、熟成過程をコントロールすることも可能。

  

コンクリート・エッグ - Concrete eggs

ホークスベイのワインメーカー、トニー・ビッシュは、卵型のコンクリート発酵槽を使い卓越したシャルドネを造るという革新的アプローチを取り入れている。海外で初めて見たものにインスピレーションを受け、ニュージーランドへの法外とも言える高額な輸送費を免れる手段を探し求めた結果、ビッシュはニュージーランド初となる国産卵型タンクを作り上げることにした。キウイの創意工夫性を生かし、ヘイスティングスに拠点を構える会社、NZタンクスが持つ独自のノウハウを活用することに成功。ビッシュは現在卵型タンクをニュージーランドワイン業界とオーストラリアへ出荷している。

トニー・ビッシュは2015年にコンクリート・エッグをニュージーランドのワイン業界に紹介、その後タランソー社のフレンチオーク樽「オウヴァム」エッグに惚れ込んだ。ビッシュは世界でたった10樽のうちの一樽を輸入、現在「オウヴァム」は、トニー・ビッシュ・ワインズのネイピアの拠点、アフリリのザ・アーバン・ワイナリーにて保管されている。オウヴァムはオーク樽と同様の過程をたどる。人が介入する必要を無くし、自然に攪拌することを除いては。

 

リモート・コントロール・ワイン - Remote control wine

ワインタンク用の温度・発酵用装置を製作したキウイ(ニュージーランド)の会社がワイン業界で国際的評価を受けている。

 ワイン・テクノロジー・マールボロのワインタンク内の温度を自動コントロールする集中遠隔制御システム、ヴィンウィザードが世界中の時間に追われているワイナリーで利用されている。ワインの品質を決定づけるため、温度管理は発酵過程における重要なパートである。このシステムは現在世界6ヶ国、100以上のヴィンヤードで使用されており、南北アメリカとオーストラリア、スペインで基盤を築いている。

 

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